追憶

 今では当たり前のように出来ている処置、初めて行った時のことを記憶の糸を手繰り寄せながら思い出してみます。

歯科麻酔…確か2007年でした。学生実習で同じ班のクラスメイトの上顎の前歯に打ったのが最初だったと記憶しています。もうプルプルでした。日時生活ではしないようなポーズをキープし続ける必要があるのと人様の口の中に針を刺す緊張が相まって終始ガチガチな動きだったと思います。「普段使わない筋肉を使うからね、最初はみんなそんな風になるよ」当時の担当教官の優しい声が今でも耳朶に残っています。

歯肉を切る…メスを初めて歯ぐきに入れたのは2010年でした。患者さんの名前まで記憶してます。人様の身体にメスを入れるという行為は歯科医師免許が免罪符になっているわけですが、その時の緊張は忘れるべくもありません。頻繁に行う処置ではないため今でも多少は緊張しますが、最初は何か犯罪を犯したような気分になったことを今でも鮮明に記憶しています。

むし歯を削る…研修医の頃(2009年後半)だったと思います。19歳の女性の患者さんの上顎の前歯でした。「カリエス全部取れたら教えて」と教官に言われ、どこまで削っていいか分からず、怖くなって担当教官に変わってもらい訂正を受けました。この一症例が私の原体験です。勘所を掴めた感覚がありました。今でもこの患者さんと指導教官には感謝しています。

神経を取る…研修医の頃(2009年中盤)でした。50代の女性の上顎の前歯だったのですが、どのバーを使っていいのかすら分からず、見かねた教官がこれとこれ使うといいよって教えてくれて、そのあとは不思議と自分で出来ました。今思えば麻酔が効きやすく、お口が大きく開く患者さんを選んでくれていたのだと思います。教官たちの優しさを感じずにはいられません。神経を取る処置は研修医の割と早い時期にマスターした記憶があります。

抜歯…研修医の頃に歯周病でグラグラしてる上顎の2番を抜いたのが初めての体験でした。麻酔さえ効けば誰でも抜けるような歯だったので、さしたる達成感や感動はありませんでした。翌年開業医に就職して右上の親知らずを抜歯したのが初めてのガッツリ体験でした。その時に手技を教えてくれた2つ上の先輩には今でも感謝の念を禁じ得ません。若くして黄泉の国に旅立ってしまわれましたが…

インプラント…2012年に50代の女性の患者さんに埋入したのが最初の体験でした。今思えばもっと深くに入れておけば良かったなとか、強い力で締めすぎたかなとか色々と反省点はあったのですが、不思議と上手くいかなかったことはなく、怖いものを知りませんでした当時は。あの時の感覚に戻りたい。

矯正…2013年に担当させてもらった患者さんを2年間かけて並べたのが最初の症例だったと思います。簡単な処置は単発で担当させてもらっていたので矯正の手技自体はある程度身についていたのですが、最初から最後まで1人の患者さんを診れたことは大変良い経験でした。その患者さん(とその後に担当した数名の患者さん)の名前は終生忘れることはありません。

「日々是決戦」二浪目の時に自習室だけ利用していた代々木ゼミナールの各教室にはこの五文字が至る所に貼られていました。このブログを書きながら、なぜがその頃の風景を思い出しました。
歯科医になって早14年。どんな処置でも漫然と油断をせず、上に書いた原体験とこの五文字を思い出しながら仕事に向き合っていきたいなと思う今日この頃です。

先週は本当に色々と忘れられない体験が多かった。この快哉や疼きは私の脳髄にしっかり刻んでおきたいと思います。

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