俗世

 診療終わりに悲しいニュースの報に触れました。彼はまだ27歳。これから先の人生まだまだ楽しいことがたくさんあったと思います。自ら命を断つ人はその場その時の勢いで実行してしまうことが多いらしく、本心ではまだ生きたいと思っている人が9割以上だと言われています。なので偶然助けられた人はほぼ全員が感謝の弁を述べるそうです。彼もその中の1人だった可能性も十分あります。巷間伝わるところによると、彼は連日SNSで叩かれまくっていたそうです。開かれたオープンなコメント欄は時として、心ない人が心ない言葉をぶつけることで心のバランスを取る場と化すことがあります。一般人である私のような卑小な人間が想像出来るべくもありませんが、ぶつけられた当本人はたまったものではないでしょう。韓国では親指殺人という言葉があるくらいです。

生きるのは辛い、でも自殺する人は絶望するのが早過ぎるとも思うのです。

 30年以上前、私の母はピアノ教室を営んでいたのですが、その中の生徒さんにミエちゃんという女性がいました。私より12歳年上のとても美人な人で、私が小さい時からナオちゃんナオちゃんと可愛がってくれていました。彼女の可愛らしい声は今でも耳朶に残っています。そんなミエちゃんは私が高校2年生の時に自ら命を絶ちました。失恋が原因だったそうです。棺の中のミエちゃんはとても綺麗な顔をしていました。どうしてこんな綺麗な人が自ら命を絶ってしまったのだろう、、当時は悲しさと不思議さとやるせなさがないまぜになった感情に包まれた記憶があります。

 ◯◯ガチャという言葉はよく聞きますが、現代の日本人に産まれてきただけで、国ガチャS、環境ガチャS、健康ガチャSだとは思いませんか。教育ガチャS、時代ガチャSも付けたいくらいです。こんな平和で治安も良く、自然豊かで水道水をそのまま飲めるほど衛生環境が整った国は他にありますでしょうか。ただ周りが全員日本人だとそれがデフォルトになってしまうので、何か辛いことがあると自分は不幸だと思ってしまうのでしょうか。

「人生は、生まれた環境や持って生まれた資質など、“自分で能動的に選べなかったもの”によってある程度決まっている。」
この世の真理だと思います。どんな綺麗事や理想論を並べても、環境と資質というとてつもなく大切な2つの要素がランダムに決まっていってるのが俗世。抗うことは出来ません。
神(否定も含めて)と宇宙と世界と人間と人生をとことん思量して、もう自分自身が強くなるしかないのです。

40歳の私は今のところ、このような結論に達しています。

泉下のミエちゃんの意見を聞きたい。叶わぬ願いですが。

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