歯石取りは1回で終わる?

 患者さんからよく受ける質問の1つに”歯石取りは何回くらい回数がかかるか”というものがあります。この質問をしてくる患者さんの気持ちはわかります。おそらく1回で終わらせてほしいのでしょう。結論から言うと1回で終わらせることは可能ですが、症例が限られます。まずは(コントロールされていない)歯周病でないことが前提で、歯石の付着量が軽度で開口量に問題がなく、知覚過敏や嘔吐反射が無い患者さんであれば1回で終わらせることは可能ですしそのように努力しています。歯周病の患者さんでも一通り歯周治療が終わってメンテナンスモードに入っていれば1回で終わることが多いです。
もう少し詳しく書くと、保険証を使って歯石取りをする場合は、歯ぐきの状態のチェックが最初に必要になります。歯周ポケットの深さを測ってその患者さんの歯ぐきの状態を審査し、歯石を取り終わった後は同じように歯ぐきの状態を評価し、腫れがどのくらい引いたのか、追加で歯ぐきの中のお掃除は必要ないか、膿が出ていたり出血が止まらない箇所はないか、グラグラしてる歯はないか、仔細に記録することが国から義務付けられています。保険証を使うということは国が定めた基準に則って診療を進める必要があるため、基本的に1人の患者さんを特別扱いして長く時間を取って歯石取りをしたり、無理に1回で終わらせたりすることは良しとされていません。
個人的に悲しく感じるのは、わざと治療を長引かせて来院回数を稼いでいるのではないかと思われることです。私も歯科医になる前は1本の歯の治療で3か月通ったことがあるため、そのような考えに至ってしまう気持ちも理解できなくもありません。なんでこんなに進まないんだ、早く型を取って銀歯を入れたらいいじゃないか、早よ終わらせてくれと心の中で思っていましたし、毎回歯科衛生士さんに歯石をガリガリされるのも苦痛だった記憶があります。
鼻は1つ、目や耳や肩は2つ、翻って歯は平均28本あります。眼科や耳鼻科、整形外科は基本的に予約がなくても診てくれますし、何回も通院する必要はありませんが、歯はまず本数が多いですし、1本1本にストーリーが存在する場合は1年以上通院が必要なことも少なくありません。歯石も歯ぐきの上に付いている比較的柔らかいもの(縁上歯石)もあれば歯ぐきの中にこびり付いている硬くて頑固なもの(縁下歯石)もあります。それを1回で取るのはなかなか至難の業です。例え身内でも歯石や着色、ヤニの付着量が多かったら2回に分けさせてくれと懇願するでしょう。それくらい歯石を1回で取り切ることは難しかったりするのです。我々の利益だけ考えれば同じ患者さんを回数を分けて何度も診るよりも、新しい患者さんをたくさん診る方が儲かります。わざと治療を長引かせるようなことはする意味が無いですし、そもそもしようとも思いませんし、お互いにとってメリットが無いのです。そのことを言葉を尽くして説明してもなかなか理解が得られないことも少なからずあることが口惜しいのですが、歯の治療はどうしても回数がかかってしまうということを理解して頂けると嬉しいです。
私は歯科医になっていなかったら歯はボロボロだったでしょうし、滅多に行かない歯科医院で、あと何回かかるのか、次はいくら持って行ったら良いのかを受付で聞きまくっていた自信があります。それくらい歯科の治療って何をしているのかわかりにくいですし色々と誤解を受けやすいんですよね。。
自費の歯石取りを行っている歯科医院であれば1回で歯石を取ることも可能なのかもしれませんが、それなりの金額をチャージされるのではないかと思います。都内であれば1回あたり2万〜3万円でメニューを設定しているところもあります。お勉強と称して今度行ってみようかな?1回では終わらないと言われたら飛行機で何往復かするのだろうか。マイルはどれくらいあったかな??

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