私が5歳の時に父親に連れられて歯医者に行った時の話です。おそらく前の日に親に歯が痛いと訴えていたんでしょう。当時住んでいた家の近くの雑居ビルの2階にある歯科医院を受診したことがありました。その歯科医院は院長がものすごく怖い歯医者で、麻酔が奏功してしないのにガンガン歯を削られたことがあったのです。もう大泣きですよ。5歳ながらにしてコレはいかんやろーってくらい荒く処置を進められたんです。見兼ねた父親がストップかけてくれて処置は中断されたのですが、思い通りに処置が進まなかったのが腹立たしかったのか、今度は「あなたの育て方が悪いんですよ!」って父親に説教をしてました。完全に昭和の歯科医ですね。まあ1988年の出来事なのでギリ昭和なのですが笑。
そのあと祖母に連れられて別の歯科医院に行ったのですが、そこでは声掛けをしてくれながら処置を進めてくれました。もちろん痛み無しです。その歯科医院は今でも現存しますが、いまだに前を通るたびにありがとうと心の中でつぶやいてしまいます。
この2つの対照的な出来事が私の歯科治療の原体験になっています。言わば地獄と天国。
今なら理解が出来るのです。おそらく1件目の歯科医院を受診した時はむし歯で歯の中の神経が炎症を起こしており麻酔が効きにくい状態だった、2件目の歯科医院を受診した時は神経が死んでいたため麻酔無しである程度処置ができた。もしかしたら1件目の院長はなんだかんだ言いながら歯の神経を弱らせるお薬を歯の中に入れてくれていたのかもしれませんね。だから2件目の医院ではスムーズに処置を完遂できた。そう考えると1件目の院長に対して少しだけ溜飲が下がります。
私は体質的に歯の麻酔が効きにくいです。なので歯を削られる痛みがよくわかります。患者さんが痛みを訴えたら処置を中断して麻酔を追加して対応します。どうしても麻酔が効かない時はその日は無理をせず処置日を改めます。歯って一度麻酔が効かなかったら後から何本麻酔を追加してももう効かないんですよね。痛みのスイッチが入ってしまうというか。生理学で学ぶ痛みの閾値の低下ってやつです。
もし幼少期のこの体験が無かったら、私は患者さんの反応ガン無視の歯科医になっていたのでしょうか。元々優しくおとなしい性分なので(自分で言うな!)それはないと思いますが、1件目の院長がある意味良い反面教師になっているのは論を俟たないと思います。ちなみにこの怖い院長、後に自ら命を絶ったと母親に聞かされた時は複雑な気持ちでした。長崎の歯科医院なんですけどね。
何が言いたいか。
歯は元々削るようなものではない。乳歯でも永久歯でもそれは同じ。神様もそこまで考えて生き物を設計していなかったはず。予防が1番。止むに止まれぬ事情で歯を削らざるを得ない時は、仕方がない、その時は諦めて歯科医院を受診しましょう。ただし痛みに最大限配慮してくれる医院を選ぶ努力を惜しんではいけません。
父親に会うと今でも1988年の歯医者で私が泣いた話題を振ってきます。それくらい親にとっても衝撃的な出来事だったんでしょうね。(院長と戦ってくれたのは嬉しいけど、当時から歯ブラシとかフロスとかしてくれてたら良かったのに!)って心の中で思いますが、歯の本数がかなり少ない父親に言うのもなんだか忍びないので言ったことはありません笑。
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