自分の好きな処置について考えてみた

 歯科の治療はむし歯の治療から歯石取り、親知らずの抜歯やインプラントから矯正治療など多岐にわたります。プラージュデンタルクリニックでは開院以来、外部から歯科医師の先生をお呼びして処置を依頼したことがありません。また今後もその予定はありません。つまり院長である私が全ての処置を担当しています。

  オーソドックスと言えばオーソドックスなのですが、ほぼ全ての診療メニューを院長のみで完了しているという点においては全国的に見ても少し特殊な歯科医院なのかもしれません。

  たまにふと考えます。自分の得意な処置は何なのだろうか。逆にあまり得意じゃない処置は何かなど。ひとつひとつ見ていきます。

  まずはむし歯の治療。結論から言うと好きでも嫌いでもないです。でも、自分が小さい時むし歯で苦労したので放っておけない。見つけたら必ずカメラで撮って患者さんに伝えます。むし歯は一度発生すると自然に消えて無くなることはありません。神経がある歯の中心部に向かってどんどん大きくなっていきます。つまり患者さんはむし歯を放置することで不利益を被ります。なので他の処置より優先することが多いです。なぜ好きでも嫌いでもないか。それは麻酔が効きにくいことが往々にしてあるからです。特に下の歯は効きにくい。治療が終わった後も数日噛んで痛むこともあるし、水がしみることもある。むし歯を取る行為自体は嫌いではありません。むしろ好きな方に分類されるかもです。むし歯でダメージを受けた部分を器具で除去しているときは無心になれます。取り残しはしたくない、再発してほしくないから時間をかけてでも完璧に取り切るようにしています。神経に近いと患者さんは痛がることもあります。でも取り残しはあり得ない。何が何でも麻酔を追加して除去するよう努めます。やむに止まれぬ事情でむし歯を全部取りきれない時(どうしても麻酔が効かなかったりお口が開かなかったりなど)はむし歯の進行抑制作用がある薬剤を置いて詰めるようにしてますし、その旨を必ず患者さんに伝えるようにしています。
好きでも嫌いでもないという表現は正確には正しくないのかもしれません。一言で言うと「放っておけない」といったところでしょうか。

  次は抜歯。これは好きですね。抜けるかなと不安に思うこともありますが逆に色々とアプローチを考えるのが楽しいと言うか。むし歯の治療は15-20分くらいかかることも珍しくありませんが、抜歯は早ければ数十秒で終わります。なので射幸心を煽られます。割れてる歯や乳歯の抜歯は麻酔が効きにくいのであまり好きではありませんが、押し並べて抜歯は全般的に好きな方です。自分も親知らずを昔4本抜いてもらったことがあるので処置中の患者さんの気持ちもある程度理解はしているつもりです。楽しいと言うと誤解を生むかもしれませんが、でもワクワクするんですよね。同じようなことを昔大学病院の口腔外科の先生も仰っておりました。このようなメンタリティを持つ先生はある一定数存在するのかもしれません。

  次に歯石取り。これはむし歯の治療に似てますね。つまり好きでも嫌いでもない。やっていくうちに楽しくなってついつい全部取り切るまで頑張ってしまうというか。唯一むし歯治療と違うのは歯周治療はまだ自分自身が苦労を経験していない分野であるということ。つまり私はまだ歯周病になったことがないので、厳密には歯周病の患者さんの気持ちに完全には寄り添えてないんですよね。むし歯は過去にたくさん治療したことがあるのでその痛みや苦しみが共感出来るのですが。歯がグラグラしたり歯ぐきが腫れて膿が出るという症状を経験したことがある歯科医師の方が、もしかしたらより患者さん目線で治療に向き合えるのかもしれません。ただ私は知覚過敏気味なので、歯石を取る器具の振動による歯のしみる気持ちは痛いほどわかります。なので自然と「お水はしみないですか?」と声かけしてしまいがちです。

  次は矯正。これはもう完全に好きですね。毎回患者さんに会うのが楽しみというか。ちゃんと歯は動いているかな、器具が外れたりはしていないか。矯正を希望される患者さんは不思議と始めからむし歯がない方が多いんですよね。個人の感想かもしれませんが、明らかに管理が行き届いてる人が多い。元々歯を大切に管理する習慣がある人は、矯正期間中も丁寧に磨いて管理してくれる。綺麗な口元がより綺麗になっていく様子を観察できるのは、純粋に嬉しいですよね。私は矯正専門医ではないので明らかに難しい症例や患者さんの意向に添えないケースはお断りしています。が、一度でも出来ると判断した症例に対してはとことん向き合います。矯正治療をしている友人(歯科医)が複数いるので、判断に迷う症例は相談して計画を立てたりしますし、逆に相談を受けることもしばしばあります。日々是勉強って感じですね矯正治療は。「先生は矯正されてたんですか」という質問をよく受けます。治療中はマスクをしているので患者さんから聞かれることはあまりないのですが、プライベートではよく聞かれます。元々歯並びは良いんです私笑。なので歯石取り同様、矯正治療を受けたことがないので厳密には患者さんの治療期間中の痛みや抱いている悩みなどがわからないというのはあります。どちらかと言うと、歯並びが少し悪いくらいの八重歯があるくらいが可愛いと思ってしまう自分もいます。チャームポイントというか。なのでむし歯の治療と違って、歯並びがあまり良くないなと感じても自分から営業はかけないです。そのままでも充分魅力的ですよって思ってしまうので。もちろん歯並びを気にしている人に対してはちゃんと治しますよ。そこはプライドを持って仕事を完遂します。

  次はインプラント。これはもう大好きですね。1番好きと言ってもいいくらい。奥が深いんです本当に。常に新しい情報に触れて知識をアップデートしていかないと置いていかれるというか。最新の情報にはキャッチアップするように心掛けてますし、ウチは割と高価な機器も揃えてはいるつもりです。ノーベルというメーカーのインプラントを使用しています、と言っても一般の人には馴染みのない名称ですよね。車で言ったらTOYOTA、ハウスメーカーで言うと積水ハウスと例えたら少しは伝わるでしょうか。要は割と上級ブランドなのです。インプラントは基本的に一生ものなので、世界的に信頼のおけるブランドの製品を使用するようにしています。患者さんの安全を第一に考えて術前にCT画像上で安全な領域を十分確保し、何度もコンピュータ上で埋入する角度や長さ等をシミュレーションしてから処置をするようにしています。なので極端に難易度の高い症例や安全が確保出来なさそうな症例はお断りしています。毎回緊張します。なかなか慣れることがありません。慣れる日が来るのでしょうか笑。でも、毎回緊張感がある方が成功するのでいいような気もします。日々是勉強ですインプラントに関しては特に。

 次は神経を抜く治療について。いわゆる根の治療ですね。あまり好きではないです。しかし予後は割といいと思います。最初が1番肝心なのです根の治療は。とにかく感染させないことが大事。好きではないからこそ初回に全集中力を注ぎ込みキリのいいところまで終わらせる。神経は目に見えない根の細い部分まで走行しているため、私は昔から必ず薬剤で溶かしながら処置します。この辺りは研修医の時に大学病院(の保存科)でみっちり指導を受けたので、新米歯科医の頃から割と得意な方でした。根の治療は不得意な先生は多いですよね。感染して長引かせてしまったり、削りすぎて歯の深い所に穴を開けてしまったり。なぜでしょうか。私にはあまり理解が出来ません。ただ初めから感染して膿を溜めている根の治療は難儀します。これはもう治らないことも多いです。なのでとにかく初回が肝心なのです。やり始めると楽しくなったりもするんですけどね神経を抜く治療は。でも歯にとって神経はあった方がいいです絶対に。神経を抜くメリットは、その時は歯を抜かずに済むことと、向きを大きく変えれることくらいです。なのでみなさん神経に到達する前にむし歯は治してください。神経を抜くと歯の寿命が短くなってしまいます。私がどの処置よりもむし歯治療を優先する理由はここにあります。

 最後に義歯について。入れ歯は本当にもうなんというか、普通です。好きではありませんが嫌いでもありません。なぜか。自分が装着したことがないのでいまいちイメージが出来ないのです。いままで延べ何千もの義歯を見てきましたし製作もしてきました。自分の歯のように噛めるようになったと喜んでくれる患者さんもたくさんいますし、違和感が大きいから結局は使わなくなったという患者さんもいます。人と会う時だけ着けるという患者さんもいれば、痛くて最後まで合わなかったという患者さんもいます。私は物を身に付けるのが苦手です。メガネは複数持っていますがかけませんし、腕時計も違和感があるので付けません(というか1つも持ってないです)。なので私が将来義歯になった場合、違和感が強くて装着出来ない自信があります。それも手伝ってか義歯に対しては昔からあまり興味がありません。ニーズがあるので対応はしますが、本当に噛めるようになるのかなといつも思います。可能であれば1日だけでも義歯を入れてみたいですね。そうしたら義歯に対する見方が変わるのは間違いなさそうです。ただ開業する半年くらい前に義歯のスペシャリストみたいな先生に色々と教えてもらえた時期があって、その影響でたまに変わった手技を使ったりもします。その先生には今でもとても感謝しています。

 読み返してみるとかなり正直に書いています。全ての処置に自信があって大好きですと言えた方が良いのでしょうが、それではウソになってしまいます。でも総じて得意というか好きな処置が多いです。やり始めると楽しくなってきますね。そうでないと10年以上もこの仕事は続けていられないでしょう。私字は汚いのですが、歯の形成や顕微鏡のスケッチは上手だねと学生の頃から褒められてました。

医学部は受からなかったけど、歯科医師でよかったのかなーと思うようにしています。

また近いうちにセンター試験受けます笑。あっ共通テストでした。

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